371 労働主体形成法 =これからの生活=

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経営コラム SOLID AS FAITH 第371号
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 ご愛読ありがとうございます。第371話をお届けします。

 早いもので、一年の半分がもう終わりました。細かな新規の案件への仕込み
作業をぽつぽつ行なううちに、慌しく半年が過ぎたように感じます。皆様は如
何お過ごしでしょうか。

 今回は、当コラム創刊以来最長のシリーズ『これからの生活』の第二弾をお
送りします。前回の『無敵のスペック』は、お会いする経営者の方々から、
「よく言ってくれた」、「やっと本音が出たな」、「こう言う学生がいるなら
どんどん雇いたい」など、共感やお褒めの言葉を多々戴きました。とても嬉し
く存じます。
 
 シリーズ全体では、高い顰蹙の可能性があるものと思っていますが、7話の
パーツが最終話でガチっと組み合わさって、中小零細企業経営的な現実チック
な社会観ができ上がるように作ってみたつもりです。徐々に組み上がって行く
各号のコンテンツを毎号届く模型付録のように、集めて何度も楽しんでいただ
ければ幸いです。
 
 今号は「働くことを選択した結果の人材」と異なる「働くことが当り前で、
ア・プリオリっぽく捉えている人材」が、どのように形成されるのかを考えて
みた号です。世界の中に存在する飢餓に困窮する地域の人々は、子作りを家族
の中の労働力獲得の手段として行なっていると聞いたことがあります。事の真
偽は兎も角、子供には労働から学ぶことが多々あると私は考えています。そん
な論点をご一緒に考えて戴ければ幸いです。本文に対するご意見・ご感想をお
待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その371:労働主体形成法 =これからの生活(2)=

「娘がなかなか寝なくてさ、ゲームやってて。その後に、言われたホームペー
ジの原稿考えて、それから、明日のお客さんのチャートをパソコンで作ってた
ら、机に向かって寝込んじゃったよ。娘の成績が悪くてさ。ほんとに困っちゃ
って。塾にやるのも、ほんとに大変だし。すぐサボってアニメイトとか行っち
ゃってたりするし。学校から帰ってきても、なんか家で遊んでばかりいるんだ
よね」。
 クライアントの占星術師のシングルマザーが二週に一度の打ち合わせに来て
私に言う。彼女は以前から好きだった占いで食べて生きたいと考えていたが、
仕事も増えず、中学校に上がりたての娘を育てることに追われ、派遣の事務職
をしながら、生計を立てている。

「ん?。一応言うけど、娘さんに何で家事とか仕事の手伝いをさせないのかな。
俺も母子家庭で育ったけど、母の婦人服仕立ての仕事、物凄い手伝わされたよ。
その合間縫って学校の宿題やるのが大変で。狭い家の居間にお客さんが来ると、
居間のテーブルで勉強できないから、ランドセルを床において机にして勉強し
てたこともあるぐらい。
 北海道だから、視界50メートル以下の吹雪く晩にできた服を届けに行ったり、
生地に傷つけないように縫い目に剃刀当てて、スカートを解いたり。あと、型
紙にする新聞紙の整理とか、ドレメとかの雑誌を切り抜いてツール作ったり。
やること山ほどあったよ。
 娘さんに、パワポ教えて星配置のチャート作らせたり、CMS教えてサイト更
新させたり、請求書の印刷させたりとかさ。勿論、茶碗洗いや風呂掃除とかの
家事もやらせてさ。そう言う方が絶対に生活力つくし、働くことに疑問を持た
なくなるんだよね」。
 私が言うと、「あなたは優秀だから」と彼女はせせら笑った。

 文具の取次ぎをしている会社の社長が、中途採用の応募者の履歴書を二部私
に見せて、どちらが良いか意見を尋ねてきた。私が答えようとすると、「当て
させてくれ」と言って、二部を見比べ直して、片方を私に「こっちだろ」と突
き出した。

「じゃあ、私がこちらを選ぶだろうと社長が思った理由を、私が当てましょう」
と禅問答のようなことを答えた。ほとんど似たレベルの大学で、どちらも20
代後半。経歴も大きく異なるところがない。どちらも良くも悪くも目立つとこ
ろがない。私がそれでも選ぼうとした人物は社長の予想通りだった。予想通り
の「自営業の子供」。

「自営業の子供は大抵、働くことが選べないことだと知っている」とこの社長
は言う。まるで呼吸か何かのように、疑問の余地も選択の余地も無く、ただす
ることになっている労働。その事実を自然に受け容れられることが、かけがえ
のない資質だと言う。

「内田樹が『下流志向』に書いている“労働主体”って奴だと思いますよ」と、
履歴書をまじまじと見てから目を上げて、私は笑って答えた。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

『若手社員はこれを読め!』

弊社のクライアント企業の若手社員の勉強会で、
読書課題を出すことが増えています。

課題図書を指定して、
その感想文を書いていただく課題を出します。

その話をお会いする経営者の方々にすると、
その書籍群を教えて欲しいと(非常に高い確率で)言われますが、
課題図書は、その状況によって異なりますので、お答えに困ります。

負荷を考えて、5冊程度にすることもあれば、
時間をかけて、30冊程度を読んでいただく形にすることもあります。

今回は最近の某クライアントの課題図書の一部を紹介致します。

■『人生で大切なことは、すべて「書店」で買える…』 千田琢哉 著
■『自分様と馬の骨…』 勢古浩爾 著
■『平成社員道…』 染谷和巳 著
■『営業のすべてが身につく本』 内藤和美 著
■『現場論…』 遠藤功 著

対象者の社員とその社員に対する組織の期待を見比べて、
課題図書をオリジナルで見繕います。

「ウチの社員は本を読まない」と嘆くのではなく、
組織の底力をつけるビジネス書精読企画を
是非、御社内でも実現しては如何でしょうか。

お問い合わせはメールにて…
 bizcom@msi-group.org

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『ハイパフォーマー 彼らの法則』 相原孝夫 著
■『選ばれる理由…』 武井則夫 著
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 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第372話 『高リターンの追求』 シリーズ『これからの生活』(3)
 (7月25日発行) 
 子育てには、人生における最大の投資と言う側面があります。投資と見立て
たとき、成功確率の高い方法も自ずと存在すると考えられます。就労人口の問
題の裏側で忘れられがちな論点を考えてみます。

(完)